人材難のこの時代に採用にまったく困らない会社やお店があることを、あなたは信じられるでしょうか。
それが実際にあるのです。非常に魅力的なレストランは人材採用に困りません。例えばカリスマシェフがいるようなお店なら、そのシェフの元で修行できるため多くの意欲ある料理人やサービス係りが集まります。
そう、そこで働く人にとって魅力があるなら人材は集まるのです。
シェフが魅力的、店舗が魅力的、商品が魅力的、そしてオウンドメディアが魅力的。こういう要素を持った企業、会社、お店ならば優秀で意欲的な人材は集まります。この記事ではオウンドメディアをどのように工夫すれば人材が集まるか、検討してみます。
目次
- なぜ人材不足なのか、人口と情報洪水
- オウンドメディアの事例
- オウンドメディアは採用活動の間接的アプローチ
- 小予算でオウンドメディアを魅力的に仕上げて採用に役立てる
なぜ人材不足なのか、人口と情報洪水
オウンドメディアについて検討する前にまずは時代の状況を確認しましょう。そもそもなぜ多くの会社が人材不足なのでしょう?。その理由は明白で、日本の人口が減っているからです。以下に人口動態の表を掲載します。
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)
時期 | 総人口 | 0〜14歳 | 15歳〜64歳 | 65歳以上 |
---|---|---|---|---|
2010 | 1億2800万 | 13.2% | 63.8% | 23% |
2015 | 1億2600万 | 12.5% | 60.7% | 26.8% |
2020 | 1億2400万 | 11.7% | 59.2% | 29.1% |
2025 | 1億2000万 | 11.7% | 59.2% | 29.1% |
2030 | 1億1600万 | 10.3% | 58.1% | 31.6% |
働く世代の中核たる15歳〜64歳の人口が目に見えて減少しているのが表から読み取れます。これはもう、企業の人材争奪戦になってしまうのは当たり前です。これだけ厳しい状況だということを、まずは改めて認識しましょう。
人口が減っているだけが人材不足の理由ではない
人材難の理由は人口が減っているだけではありません。企業の発するメッセージそのものが、届いて欲しい人に届かない時代なのです。就職活動をしているある一人の若者の行動を想像してみましょう。スマホを駆使して色々な企業情報を集めている人が圧倒的多数でしょう。スマホを使って閲覧しているのはインターネット。テレビでも新聞でもラジオでもなく、大抵はインターネットです。
このインターネット、凄まじく膨大な情報量です。佐藤尚之氏の「明日のプラニング」によるとインターネットを通して得られる情報の量は、今日では世界中の砂浜の砂を集めた量と同じくらいだそうです。つまり、あなたの発信するメッセージは世界中の砂浜の中の砂一粒に過ぎないのです。そんなたった一粒の砂を、どうやって選んでもらえばいいのでしょう。佐藤尚之氏はこの情報洪水の時代を著作で「砂一時代」と命名しており、第一章で深く絶望しています。ちょっと引用します。
浅田真央の涙のスケーティングという「超優良コンテンツ」ですら、すぐ記憶の彼方に飛んでいってしまうような「情報”砂一粒”時代」にボクたちは生きている。広告のコンテンツ化とかコンテンツ・マーケティングとかいう呪文を気軽に唱える人がわりといる。また、「面白い動画を作ってバズらせましょう」みたいなことをさも簡単そうに口にする人もわりといる。でも、それってそんなに生やさしいものなのだろうかとよく思う。総合的なプラニングなしにただ「いいコンテンツ」を作っても、まず見てもらえない。
佐藤尚之著 「明日のプラニング」 p54
大事なのは本気で取り組む覚悟
天文学的な数字より更に大きい数字と言えるくらいの砂の中から、あなたの一粒の砂に等しい情報を意中の人に選んでもらうのは極めて困難です。これが前提なのです。採用担当者は「募集媒体に予算を割けばなんとなくうまくいくだろう」くらいの感覚では絶対に成功しないのです。採用担当者の本気でやる覚悟がまずは必要です。
オウンドメディアの事例
厳しい状況を認識した上で、どうすれば上手に採用ができるか考えてみましょう。あなたのメッセージを伝えたい相手に届けるにはどうすればいいでしょう。それは向こうから選んでもらうという発想が大事です。この考え方は「テレビCMで大量に認知させる」というかつての高度経済成長時代の発想とは対極にあります。
相手から選んでもらうには、あなたの会社自体が魅力的でなければなりません。そのアピールの一環として、オウンドメディアを運営するのは一つの解決方法だと思います。ではオウンドメディア、優れた採用サイトの事例を少し見てみましょう。
余談ですが、オウンドメディアってウェブサイトとは限らないです。紙媒体の社内報とか、Facebookページとか、「これがおれらのメディアだぜ」って自信を持って言えるなら、それは立派なオウンドメディア!
Sony Musicの2015新卒採用サイト
http://saiyo.sme.co.jp/graduate_15/
中小企業からの感覚からすると予算感が根本的に違うサイトですが、あくまで参考までに。
WORKSIGHT
http://www.worksight.jp/
働く環境に関する様々な情報を葉新しているサイト。色々な会社の取り組みが読み物として面白い。
大船住研
http://www.o-jk.co.jp
工務店のウェブサイト。ブランディング化がよくできている印象。
オウンドメディアは採用活動の間接的アプローチ
以上の事例を見て分かるとおり、いずれのオウンドメディアもとっても魅力的だと思います。個人の好みはあると思いますが、どのオウンドメディアも工夫して運営しているのがよく分かります。予算をかけているもの、そこまでかけてなさそうなもの、どちらもあります。
魅力的なオウンドメディアとは単にデザインが優れているとか、SEOがよくできているとか、そんな表面的なことではありません。会社として自社の魅力をアピールするためにあらゆる取り組みをして、その取り組みそのものを情報として発信しているのです。
私の推測ですが、上に挙げたいずれのオウンドメディアを運営している会社も、そこまで採用には困っていないと思います。オウンドメディアで会社の魅力をアピールできれば、そだけで人材採用に有利に働きます。Sony Musicのサイトを除き、どのオウンドメディアも運営の目的は明らかに採用ではありません。しかしオウンドメディアを魅力的に仕立てることで、採用活動における間接的なアプローチを達成しているのです。
さて、上記事例の中でどのオウンドメディアが企業の採用活動の参考になるでしょうか。私は大船住研さんのサイトが参考になると思います。なぜかそう思うか、以下で考えを述べます。
小予算でオウンドメディアを魅力的に仕上げて採用に役立てる
まずはこちらのコンテンツを読んで頂きたいです。営業・設計・現場監督、すべてを1人で担当する理由。この記事の中の2つ目の見出しで「悪いことをも隠さず伝える。それが、本当の正直」という部分があります。住宅の設計士が、設計が決まった後にお客さんのことを考えわざわざ設計をやりなおしたくだり。この部分、私はついつい読み込んでしまいました。私は建築の分野は知識ゼロですが、仕事をしている1人として他者の苦労話に共感したのです。
どんな企業であれ苦労しながらも会社を経営しているなら、顧客を喜ばせたり怒らせたりというこが何度もあるはずです。その過程で現場の社員一人一人はすごく苦労しています。その多様な経験が人を惹くコンテンツとなり得るのです。そう、あなたの会社の中にオウンドメディアの素材は必ずある。大きな予算を投入しなくても魅力たっぷりな情報は発信できます。そういう情報は必ず共感を呼びます。例え砂の一粒であっても、共感を呼ぶコンテンツを積み重ねていけば必ず魅力的なオウンドメディアとなります。そうすれば優秀な人材は自ずと集まってくるでしょう。