ワードプレスとムーバブルタイプ以外のCMSをあなたはいくつ知っていますか?
上記の有名な2つのCMS以外にも、世の中にはたくさんのCMSがあります。その選択肢の多さにも関わらず、Web制作会社が顧客にCMSを導入する際、圧倒的にワードプレスが多いの現状です。その理由は例えば以下のようなものが推測できます。
- ワードプレスは顧客の間でCMSとして知名度が高い
- Web制作会社が導入実績が多いので作業に慣れている
- オープンソースのためCMS自体の費用がない
こうやって改めて理由を見ると、CMSとしての採用が多いのも納得できます。確かにワードプレスが優れたCMSであることは否定しようがありません。しかしこの記事では敢えて、ワードプレス以外のCMSの可能性を考えてみます。
目次
- いつものCMSという惰性のもたらす弊害
- ワードプレスの有名税はセキュリティリスク
- 顧客に本物の価値を提供できているか
いつものCMSという惰性のもたらす弊害
Web制作会社が「単に導入に慣れているから」という理由で惰性でワードプレスばかり使っていると、新しい情報、技術、CMSなどに疎くなりがちです。
人間は原始時代に自分たちの生存確率を高めるため、エネルギーをできるだけ保存する必要がありました。それ実現するために、複雑極まりない世界をできるだけ単純化して捉える能力を身につけました。そして現代の我々もその性質を持っています。簡単に言うなら、我々は基本的に怠惰なのです。慣れている方法があるとそれに頼ります。
これについて「自分を知り、自分を変える―適応的無意識の心理学 - ティモシー・ウィルソン著」から引用します。
高度な思考の多くを無意識に譲り渡してこそ、心は最高に効率よく働ける。最新式のジェット旅客機が<意識>的なパイロットからの指示をほとんど必要とせず、自動操縦装置で飛ぶのと同じだ。適応性無意識は状況判断や危険告知、目標設定、行動の喚起などを、実に高度で効率的なやり方で行っている
原始時代はこの性質が役に立ちましたが、現代の我々には時に邪魔になることもあります。いつも同じ方法に頼るうちに感度が鈍くなり、新しい情報が入ってこない。または、目の前の鮮度のいい情報を見過ごしたりします。Web制作会社がワードプレスだけを顧客に提案し続けることには、こういった弊害があります。
Web制作会社はもっと優れた価値を顧客に提供できるかもしれないのに、ワードプレスを使い続けることで、その可能性の芽を自ら摘んでしまっているのです。例えいま、あなたの顧客が不満を感じていなくてもそれは表面的なことにすぎず、潜在的には不満を持っているかもしれないのです。
ワードプレスの有名税はセキュリティリスク
顧客が持っているかもしれない潜在的な不満について具体的に見てみましょう。ワードプレスの場合、それはセキュリティリスクが挙げられます。有名かつフリーなCMSであるがゆえに悪意ある攻撃を受けやすいのです。MacよりWindowsのほうが狙われやすいのと同じです。
Web制作会社がワードプレスを採用しているのにSQLインジェクションの対策をしていない場合、顧客のウェブサイトはセキュリティに関して裸同然です。Web制作会社は顧客のリテラシーが低いと、面倒だから、あるいは依頼されなかったからという理由で手を抜いてしまいがちです。それが原因で顧客のウェブサイトがトラブルに見舞われたら顧客満足度がどうなるか、言うまでもありません。
ワードプレス以外でセキュリティ面に関して優れたCMSがあるなら、Web制作会社としてそういった情報を積極的に集めるべきでしょう。
アーリーアダプターなWeb制作会社を目指す
Web制作会社からすれば、Webサイト新規構築やリニューアルはお客さんとの接点が短い。納品して終わり。だから、その後の修正や保守で利益を上げたいと考えるWeb制作会社が少なからずいるかもしれません。そんな考えに基づいて、カスマイズをたくさんして顧客自身や他の業者では修正や保守ができないような複雑なウェブサイトやシステムを意図的に構築するWeb制作会社がいます。
さらにそういったWeb制作会社は客の無知につけこんで求められてもいない仕様を盛り込んだりしたりします。これはせこいタクシーの運転手が客が酔って寝ている間に遠回りするようなものと言えます。一時的な売上は上がりますが客の信用を失います。つまり顧客満足度は下がります。
逆に顧客自身でWebサイトの簡単な修正や更新ができるなら、それは顧客にとって大きな利点となります。以下のような場面を想像してみてください。
- 顧客がウェブサイトの簡単な修正を必要とする
- 顧客がウェブサイトの修正箇所に関する資料を作る
- 資料をWeb制作会社に渡す
- Web制作会社は見積もりを出す
- 顧客が見積もりを検討する
- 予算OKならWeb制作会社に発注する
- Web制作会社が修正作業をする
- 顧客が確認する
- 修正箇所が公開される
簡単なウェブサイトの修正だけでこんな手順を踏んでいれば、一ヶ月かかることもあります。いや、数ヶ月かかるかもしれません。こんな状態が長く続けば、スピーディーにWebサイトを修正したい顧客は不満をためていくことになります。例え直接クレームを言わずとも、潜在的な不満は確実に蓄積されていきます。
こういう不満を解消するにはどうすればいいか?
もし簡単なWebサイト修正を顧客自身でできるとすれば、上記の複雑な工程の大半がカットされます。それを可能にするCMSがあるなら、Web制作会社はそのCMSを顧客に提案するべきでしょう。顧客のWebサイト運用のコストが下がるなら、顧客の満足度は上がります。
Web制作会社として本当に顧客が満足する価値を提供できているかどうか、いつも何の疑問もなくワードプレスを使っているなら、他のCMSを一度検討してみてはどうでしょうか。新たな可能性が広がるかもしれません。こういう進化を求める意識が案件の炎上を防ぎます。炎上の少ないアーリーアダプターなWeb制作会社は、例えばこういったような努力をしているものです。